はじめに
近年、消防行政は日本各地で発生した多種多様な災害の対応を担うものとされている。皆さんの記憶に新しいものはJR福知山線の脱線事故や、中越地震で発生した土砂崩れで、埋もれた車の中に取り残された皆川雄太ちゃんの救出活動ではなかろうか。
あの救出劇は、テレビで生中継され釘付けになり、救出の際は手をたたき喜んだ市民も少なくないと思う。あの報道を見て市民の消防に対する期待は増加したのでなかろうか。しかし、それとは裏腹に我々は素直に喜ぶことはできなかった。それは、もし管轄で同じようなことが起きた際はどのように対応すればよいのか、JR福地山線では107名が、また、中越地震ではお母さんとお姉ちゃんの尊い命が共に奪われてしまった。何とか生きて救出することはできなかったのか日々考えさせられるものである。
その後、中越地震での東京消防庁のハイパーレスキューの活躍により、総務省消防庁が特別高度救助隊の創設を決定した。しかし、大都市東京とは地域性が異なる管轄区域では、地域の特性を付加した部隊運用が最善ではないかと考えられる。
そこで私は自分にできることを考え、いろいろな災害への対応策を情報収集するとともに、新しい救助方法や救助資機材の取り扱い等の講習会に参加してきた。すると、災害対応策の資料や講習会の中で、随所に米国の消防機関やNFPA(全米防火協会)という言葉が表れて、最新の消防救助技術は米国にあるのでは、と感じるようになり、更に調べていくと、米国では高度救助技術の研究開発とマニュアル化が進んでおり、全米でそのようなトレーニングが行なわれているということがわかった。そこで、2006年2月に初めて、米国のUS&Rチームが実施する救助トレーニングに私費で参加し、研修を受けることができた。それは、ほんの入り口の基本にすぎず、今回は、さらに上級の救助技術を学ぶために参加となった。
研修場所 アメリカ合衆国カリフォルニア州
研修期間 2008年2月10日~19日
US&R(都市型捜索救助)
US&Rとは正式名「Urban Search and Rescue」の略語であり、日本語にすると「都市型捜索救助」となる。このUS&Rは、FEMA(連邦危機管理庁)に属する消防組織で構成される災害対応チームであり、全米に28チーム存在し、構成は認定された消防職員が当番制で各種大規模災害に対応しており、日本では緊急消防援助隊にあたる。主な活動は州規模レベルや連邦レベルにおける各種大規模な災害に対応しており、「9.11NYテロ」「オクラホマシティー連邦ビル爆破テロ」「ハリケーンカトリーナ」「ノースリッジ地震」「台湾地震」等の国内はおろか国外にも出動し対応するなどの実績を持っている。
今回の研修先である、US&R CA-TF3(カリフォルニアタスクフォース3)は、全米のUS&Rチームの中でも最強と呼ばれ、全米で発生した大規模災害において大きな成果を上げている極めて質の高いチームであり、全米各州の消防機関から研修を受け入れるばかりではなく、NASAのレスキューチームや、国外からは台湾や中国赤十字の救助隊などからも研修を受け入れているチームである。
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